「船乗り」(歌:広谷順子)

〜「無責任艦長タイラー特別編 MUSIC FILE 7 "音吐朗朗"」tr.4〜
広谷順子は川井憲次の歌曲でコーラスアレンジを何曲も手掛けている。歌手としての起用は「人魚の森」の「時の漂白」(「人魚の森 オリジナル・サウンドトラック」tr.2)以来2度目だろうか。透明感のある伸びやかな声がいい感じの人だ。
タイラーはテレビ版のサントラは普及率が高いものの、その続編OVAともなると少し認知度が下がる。しかしメインテーマであるこの「船乗り」は感動的なバラードで、一聴の価値あり。が、歌詞がどうにもいただけない。
この歌詞は真下耕一監督自らの手によるものだが、やはり職業作詞家との腕の差は歴然だ。全体を通して8小節ごとに意味が途切れる短い文節の連続でしかなく、これでは曲の展開に合わせた言葉の駆け引きなどは構築できない。さらに言えば、語感が汚い。爽やかな曲調とは裏腹に“悪魔”や“地獄”などの言葉が並ぶ。まぁ、これは“船乗り”というテーマからして確信的“裏腹”かもしれないので許容範囲ではあるが、いちばんマズいのがフランス語の単語を織り交ぜたこと。ジュヌセパ、プルクワ、マルシェ、シャンテ、ケスクセ……。どれも聴き取り辛く、英語と違って一般的に意味の浸透度も低く、多用すべきではないと思う(「美夕」や「Avalon」の様に最初から確信犯的に難解な歌詞で全体を構築する様な場合は別として)。日本語の歌詞の場合、“一音一文字”が美しいのだが、突然この世界に“一音一単語”の世界が混入するので非常にこの部分だけ浮いて聴こえるのだ。
とにかく曲や歌手がいいだけに、この歌詞は残念だ。というわけで「今日の一品指定」は、このヴォーカル版よりtr.1のアコギ&アコピ版「イントロダクション〜船乗り〜」がオススメよ♪ というなんとも複雑なオチだったりする……。