「整備員の詩」(歌:千葉繁)

〜「PATLABOR Vol.3 "INTERMISSION"」tr.6〜
川井憲次ファンにはおおよそ4種類の人間が居る。その1“押井監督作品しか知らない人”、その2“世間体を気にして萌えサントラは買わない人”、その3“一通り聴くけど歌モノは買わない人”、その4“出たら全部買う人”……。大概サントラファンにとっては“インスト”こそ嗜好の品であり、“歌”はアルバムの収録時間を圧迫する邪魔な存在でしかないのだ。しかしこれだけCDが氾濫する世の中で偶然にも川井憲次のCDに巡り会い、せっかくファンになったのであれば、ぜひ歌曲も聴いてみて欲しい。
そしてこの“歌の壁”を打破する一枚となるのがこのアルバム、そしてこの歌だ。カテゴリその1〜3の方々も、パトレイバーのアルバムということで買いやすいのではないだろうか。そしてこのアルバムには作品を知っていればいるほど笑える曲が満載なのだ。“機動警察”という言葉を“宇宙刑事”みたいなニュアンスで捉え直した特撮風パロディ曲や、各キャラのイメージソングも真面目なバラードからバカソングまでバラエティに富んでいる。
この曲は整備員のシバシゲオをイメージしたバカソング。“必殺”風なイントロで始まり、マイナー調弾き語りから、かまやつひろし調のフォークに移行し、サビで突然プレスリーばりのロカビリーに発展(ここの転調の壊れ具合が凄い)、そして間奏ではハードロックに乗せたマシンガントークと、まぁ、“おかしな川井さん”がこれほど炸裂する曲もそうそうない。そしてこの血管切れそうな歌を歌い上げられるのもこの人、千葉繁しか居ない。まさに絶妙のコラボレーションだ。ファンを自称するのであれば、これを堪能しないのはもったいない。
ちなみに自分がこの曲で一番好きなのは、ラストの“センキュ”のカッコヨサと、川井憲次千葉繁、とまとあきによる“まばらな拍手”とのギャップだったりする。