底無しの情熱(M1-1)

爆れつハンターBGM集(1)より〜
「インストなのにちょこっと異国語の歌詞が混ざってくる」……今では当たり前のようなことだけど、コレをこの業界に定着させたのって、実は川井憲次なんじゃないか、と思う。そりゃあ遡れば「宇宙戦艦ヤマト」のスキャットとか「銀河旋風ブライガー」の「カーメンカーメン」とか近いものがあるかもしれないけれども、ここまであからさまに「歌曲」との境界線を曖昧にしてしまったのは、もう川井憲次の功罪と言ってしまってよいのではないだろうか。
川井憲次がコレを始めたのは1988年、「パトレイバーVOL.2」収録の「N・O・A」あたりからか。その後このジャンルは「Northern Girl」(PATLABOR CD-BOX)、「IF YOU WANNA IT」(PATLABOR Theme Collection Volume 2)などを経て、1995年「攻殻機動隊」の登場により、楽器と歌の比率が逆転することで確固たる地位を得る。そして自分は、この「攻殻」の「謡」や、「AVALON」の「Log off」などを“主題歌”と呼ぶ人を聞いたことがない。やはりこれはリスナーにとっても“歌詞のあるインスト”と認識されているからではないだろうか。
(同人誌「川井憲次全CDデータブック K-TREASURE」を制作したときも、この曖昧なジャンルの扱いには正直困った)
そして「攻殻」の翌年に発表されたこの「底無しの情熱(M1-1)」は、歌謡曲で言う所の“1番”がインスト、“2番”が歌曲になっている。これまではCメロなどにちょこっと歌詞が乗る程度だったのに、この扱いの違いはやはり「攻殻」の影響だろうか。さらにこの曲は「無責任艦長タイラー」などに見られたオルガンメロのダンス曲の系譜でもあり、まさに合わせ技一本という感じ。とにかくノリがよく、本編でも第1話冒頭で使われ、番組のイメージ作りとスタートダッシュに一役買っていた。
その後もこのジャンルは「吸血姫美夕」「ブラッディ・マロリー」「信長の野望Online」そして「イノセンス」などに受け継がれ現在に至っている。